キャンプの就寝環境においてシュラフと同等に大切になってくるのが「スリーピングマット」です。
限られた容量しか持ち運べない“徒歩キャンプ”や“自転車キャンプ”において、軽量さと携帯性は必須要件ですよね。
しかし、快適性が失われるのでは?と考える方もいるかと思います。
「快適性」と「携帯性」
どちらも重視したい方にスリーピングマットの種類や特徴などの基本的な部分から、快適性アップの工夫、おすすめアイテムまで紹介していきます。
◇選ぶポイント
●種類で選ぶ
・マットのタイプ
インフレータブルマット
“寝心地”に関しては間違いなくナンバー1です。
自宅で使用するマットレスと遜色ない寝心地のものまであります。
大きな特徴として「自動膨張機能」です。
空気を入れることによって、内部のウレタンフォームが膨張して膨らみます。
このウレタンフォームによって、快適な寝心地が生み出されます。
しかし、難点は重量と携帯性です。
単体で冬でも使えるものとなると、軽量なものでも1kg近い重量になります。
エアーマット
携帯性において最も優れているのは「エアーマット」でしょう。
空気を注入して膨らませるシンプルな構造のため、軽量かつコンパクトになります。
しかし、断熱性能が低いものだと、内部の空気が冷やされて“底冷え”を感じやすいということも。
断熱性が高いエアーマットには化繊綿や断熱フィルムが内蔵されており、地面からの冷気が遮断されるようになっていますが、やはりお値段が高くなってしまいがちですね。
クローズドセルマット
軽量さとお財布への優しさナンバー1なのが「クローズドセルマット」です。
ほとんどが数千円程度で購入することができ、ものによっては「100g」を切る重量のものまで。
また、展開は「広げるだけ」なので、膨らませるなどの手間がないのも魅力。
しかし、嵩張るということが難点になってきます。
「ザックに外付け」するという選択肢もありますが、「ザック内へ収納」できるものとなると限られてきますね。
・厚みや硬さ
「厚み」については少なからず寝心地に直結する部分もありますが、厚みがあるからと言って寝心地が良いとは限りません。
エアーマットやインフレータブルマットは薄いものでも、仰向けで寝る分にはよっぽど地面は感じないですね。
一方でクローズドセルマットは厚みの影響が顕著に出てしまいます。
僕は厚さ3mmや5mmのクローズドセルマットを使っていますが、地面状況によっては、小石などを背中に感じてしまうこともあります。
そして「硬さ」については“好み”だと思います。
エアーマットやインフレータブルマットは空気の量で沈み具合などを調節できるので、好みに合わせられるのがメリットですね。
クローズドセルマットは調節ができないので、確実に好みに合わせたいなら、実際に触ったり寝てみて決めるのが無難ですね。
・形やサイズ
形
メーカーや種類によっては、形を選べるマットもあります。
一般的なスクエアタイプのものから、マミー型のシュラフに合わせた形になっているマットもありますね。
当然、マミー型の方が体積が小さくなるので軽量になります。
サイズ
サイズに関しては「横幅」と「長さ」です。
横幅に関しては、広ければ広いほど寝返りも打ちやすいことや、マットから落ちる心配がなくなりますが、その分、重量や携帯性が低くなります。
だいたいのマットが50cm~60cmぐらいなので、個人的にはそこまで気にしなくてもいいと思います。冬などは基本的にマミー型のシュラフにくるまって寝ると思うので、腕がマットから落ちるなどは気にならなくなります。
どちらかというと“長さ”を気にして選びたいですね。
自身の身長に合わせたマットを選び、無駄な容量が増えないように気を付けたいところ。
メーカーによって、長さを選ぶことができるマットも多いです。
初心者の方は、大きい方が安心感があるように思えますが、使っているうちに縦の長さには慣れてきます。
・ショートマットってどうなの?
ULスタイルで使われることの多い「ショートマット」について、個人的見解も含めて簡単にお話していきます。
まずショートマットとは、名前の通り長さの短いマットですね。
長いもので「120cm」ほど、短いものだと「100cm」ほどの長さになります。
軽量化のために、身体の中心部だけマットでカバーして、頭部は枕、足元は別のマットやザックでカバーするという使い方になります。
「そんな短いマットで寝れるの?」って思う方もいると思います。
ぼくも最初は思っていました。
でも意外と寝られるものです。
もちろん使い方や気温などによっては厳しいこともありますが、僕は冬キャンプでもショートマットで寝ることが多いです。
身体の中心部がしっかりカバーされていれば、足元は多少雑でも気になりません(笑)
これには慣れが必要な方もいるかもしれませんが、本気で軽量化したい方は、一度試してみる価値もあると思いますよ。
ショートマットの使い方や足元の工夫については、別で記事にしていこうと思います。
●使用環境で選ぶ
・R値について
まずはマットの基本である「R値」について見ていきます。
断熱性の高さを表す数値です。
数値が高ければ高いほど、断熱力があるということです。
R値の目安として一般的には、
夏が「1~2」 春・秋が「2~4」 冬が「4以上」 厳冬期や雪上が「5以上」とされています。
でもこのR値って気温で表せないので、明確性がないですよね。
気温と地面からの冷気はイコールにならないですし、湿度や風などその他気象条件にも左右されるでしょう。
あとは個人差も出るところなので仕方がないですが…
R値は一つの目安として考え、実際に使ってみて、どれぐらいまで使えるかを確かめていく以外ないですね。
まあ、冬は高いに越したことはないですが、R値が高くなればなるほど、お値段も上がります。
ここからは僕の所感と実体験です。
R値“2.7”のNEMOの“ZOR”というマットを単体使用した際、最低気温「5℃」までは快眠できました。
最低気温「0℃」で単体使用したところ、底冷えがひどくて何度も目が覚めました。
それから、「5℃」を下回る予報の場合は、別のマットを使用するか、重ねて使用しています。
一方でR値“2”相当のマットで0℃でも寝られるよって人もいます。
おそらくですが、僕は寒さを感じやすいタイプだと思います。
これが皆さんの参考になるかは分かりませんが、書いておきますね。
・レイヤリングについて
快適性アップの重要な要素である、マットの「レイヤリング」についてお話していきます。
まず上記で触れた「R値」は足し算が可能です。
つまり、R値“2”のマットとR値“2”のマットを重ねて使えば、R値“4”相当になるということです。
厳冬期用のマットである、R値“5”とか“6”のマットは高価ですし、そうそう出番がないので、レイヤリングで乗り切るという手もありますね。
そしてレイヤリングのメリットは他にもあります。
エアーマットなどの最大の弱点である「パンク」のリスク軽減です。
エアーマットの下にクローズドセルマットを敷くことで、地面の凹凸を緩和しつつ、R値アップもできます。
はじめて行く場所で、地面状況が不透明な場合などもマットのレイヤリングはかなりオススメします。
◇使い分けや収納について
様々なタイプのマットを使っている僕の、使い分けやこだわりについてお話していきます。
最初に断っておきますが、「今日はしっかり寝たいからインフレータブルマットにしよう」など、気分で決めていることも多いです(笑)
・僕が使っているマット
まず最初に、僕が愛用しているマットを簡単に紹介します▽
●インフレータブルマット
・NEMO/ZOR SHORT MUMMY 275g/R値:2.7
→夏以外はメインのマット
●エアーマット
・KLYMIT/Static V 514g/R値:1.3
→ほとんど使ってない
●クローズドセルマット
・山と道/UL Pad 15+ (100cm) 113g/R値:2.0
→春・秋の単体使用orレイヤリング
・EVERNEW/FPmat125 200g/R値:不明
→春~秋の単体使用orレイヤリング
・メルカリ購入/ウレタンマット (100cm) 40g/R値:不明
→レイヤリングorショートマットの足元
・地面状況
マット選びにおいて地面状況は重要な指標のひとつと考えます。
まず“芝生”や“柔らかい土”と分かっている場合はマットの種類はさほど気にしません。
“雪上”の場合は、当然ですが断熱性重視で考え、R値が高いマットやレイヤリングをします。
次に“河原”などの石がゴロゴロしているような場所や、“岩場”のような場所。
薄いマットでは背中に石を感じてしまい、快適性に欠けてしまいます。
また、エアーマットやインフレータブルマット1枚ではパンクのリスクが高まります。
こういった場所では、クローズドセルマットとエアーマットかインフレータブルマットのレイヤリングが基本ですね。
また、地面状況が分からない場合も、レイヤリングを基本として、2枚のマットを持っていくことが多いですね。
・想定気温
僕の中のひとつの基準が予想最低気温「10℃」です。
予想最低気温が「10℃以上」の場合は、軽量かつ展開が簡単な“クローズドセルマット”を持っていくことが多いです。
10℃を下回る予報の場合は、厚みのあるクローズドセルマットかインフレータブルマットを軸に考えていきます。
・ザックへの収納性
僕はクローズドセルマットを使用することが多いですが、なるべく「ザックに外付けはしたくない派」です。
可能な限り中に収納したいと考えています。
ということで、なるべく嵩張らないタイプのクローズドセルマットを選んで購入しています。
特にエバニューのFPmatは、ザックの背面に“スッと”入れやすい厚みとサイズ感なので、好んで持っていくことが多いです。
山と道のULPadはFPmatに比べて断熱性やクッション性は高いですが、ロールタイプなので収納にコツがいるし、ザックの容量をそこそこ取ってしまいます。
使用するザックの容量や荷物の量によっても変わるので、一概には言えませんね…
ただ、単体使用でもレイヤリングでも「FPmat」と「ZOR」の使用頻度が1番高いと思います。
◇おすすめ“軽量”スリーピングマット
様々な種類のスリーピングマットから、軽量でおすすめできるものを厳選しました。
「インフレータブルマット」「エアーマット」「クローズドセルマット」のカテゴリー別にしました。
クローズドセルマット以外は“レギュラーサイズ”&“マミー型”で紹介していきます。
おすすめのインフレータブルマット
●NEMO/ZOA
僕も使用しているインフレータブルマットです。
R値「2.7」と幅広いシーズンで使うことができ、重量は「450g」とかなり軽量。
厚さ2.5cmと薄めですが、内部のPUフォームのおかげで、寝心地はかなり良いです。
エアーマットの沈み込みなどが苦手な方には、是非おすすめしたいマットです。
ただ、自動膨張はほとんどしません。
別でポンプサックや電動ポンプがあった方がいいでしょう。
「ZOR」の詳細はこちら▽
おすすめのエアーマット
●SEA TO SUMMIT/イーサーライトXTシリーズ
・イーサーライトXTマット R値:1.2 重量:390g
・イーサーライトXTインサレーティッドマット R値:3.2 重量:490g
・イーサーライトXTエクストリームマット R値:6.2 重量:720g
SEA TO SUMMITの人気エアーマット「イーサーライトXT」シリーズ。
特徴は10cmの肉厚さで、横向きに寝ても底付きすることはありません。
R値は1.2~6.2と、季節によって種類を選べます。
エクストリームマットであれば、厳冬期でも余裕ですね。
また、スタッフサックにポンプサックが一体となっており、別で準備したり、失くしたりすることもありません。
●NEMO/テンサ―シリーズ
・テンサー トレイル R値:2.8 重量:369g
・テンサー オールシーズン R値:5.4 重量:400g
・テンサー エクストリームコンディションズ R値:8.5 重量:472g
最軽量エアーマットシリーズ「テンサー」が2024年からアップデートしています。
軽量ながら、それぞれ断熱性が向上し、寝返りによるカサカサ音が軽減されました。
また、エアーマット最大の弱点である“パンク”ですが、ボトム生地が40Dナイロンとなっており、パンクのリスクも軽減されています。
R値は2.8~最大8.5と、雪山でも余裕で使えるスペックですね。
●THERMAREST/ネオエアーシリーズ
・ネオエアーウーバーライト R値:2.3 重量:170g
・ネオエアーXライト R値:4.5 重量:370g
・ネオエアーXサーモ R値:7.3 重量:439g
サーマレストの人気エアーマット「ネオエアー」シリーズ。
“ウーバーライト”は驚異の重量「170g」
今回紹介するエアーマットでは最軽量になります。
また、冬でも使えるR値4.5の“ライト”
厳冬期の山でも使えるR値7.3の“サーモ”についても、かなり軽量です。
その分、生地が15Dとかなり薄くなっているため、パンクなど取り扱いには注意ですね。
おすすめのクローズドセルマット
●EVERNEW/FPmat
125cmで重量「200g」、厚さは5mmのショートマット。
僕も使用頻度がかなり高い万能マットです。
最初の印象は「硬い」「薄い」「短い」でしたが、これがクセになってきます。
単体でスリーピングマットとしての利用はもちろん、キャンプ中の座布団としてや、エアーマットなどとのレイヤリングでも利用可能です。
そして、ザックの背面に沿わせて入れやすい厚みとサイズなのが、持っていく頻度が高い理由ですね。
125cmと100cmで販売されていますが、必要であれば自分でカットできるので、125cmで購入することをオススメします。
「FPmat」の詳細はこちら▽
●THERMAREST/Zライトソル
サーマレストの定番マット。
片面にアルミ蒸着されており、R値2.0と春~秋のキャンプで使えます。
また、厚みも2cmで程よい硬さのため、単体使用でも充分な寝心地でしょう。
その分、レギュラーサイズで「410g」とクローズドセルマットの中では重たい部類になります。
また、ザック内への収納は難しいので、外付けがマストになってきます。
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